就活日記③

前回のあらすじ

お前のエントリー数少なくね?

 

 

 エントリー数を増やすために説明会にお邪魔してきた。やはり塾業界である。「わかるまで教える」をモットーにした中学生~高校生向けの塾である。

 私は基本的に説明会は本社や教室の空気を吸って聞くべきだと思っている。説明会では企業側は当然隠したいことは隠すため、現場でしか知りえない情報というものが必ずあるからである。

 残念なことにオンラインしか無かった。Zoomのために上半身だけスーツに着替えた。毎回思うのだが、説明会に来ているかどうかは一次面接でわかるものであって、いちいちカメラを付けて出席確認をする必要などないのでは無いだろうか。

 さて本日の御社は「人間教育」を重視している。今どきの塾は半分くらい人間性を養うことを標榜している。大手塾の圧倒的な教育の質に対抗するために、気合で捻りだした差別化点というわけでは断じてない。偏差値35~45の生徒を集め、有名公立高や大学に送り出した実績を語りだした。

 結論から言えば私の心象は最悪だった。説明会が終わり次第質問時間をブッチして抜けた。かの会社は私が"最もやってはいけない方法"で成果を上げていたのだ。

 私の思うやってはいけない方法ベスト2は、「大人の権力で圧をかけて勉強させる」「大人の無言の示唆で勉強させる」である。言葉にして言い換えれば、「親御さんが頑張って働いたお金で君たちは塾に通わせてもらっているから勉強しなさい」「(君たちは良い子だから、やるべきことは分かるよね?)勉強するかどうかは君次第だ」ということである。本日の御社は後者の方法で勉強させていた。

 やったな?

 子供は馬鹿ではない。大人の求めることなど言われなくても分かる。大人の求められることをすれば褒められる。そうやって育ってきた人間は最終的にどうなるか?自己が不安定になるのである。何故なら、求められることをやってきて褒められるということを拠り所に生きてきたせいで、自分の存在意義が「求められてきたことをやること」になってしまうのである。

 私は勝手に「条件付きの自己肯定」と呼んでいる。対義語は無条件の自己肯定である。条件付きの自己肯定に陥ると、強固な拠り所を求めるようになる。個人的には、学歴コンプやステータス主義、過激な政治主張に賛同する人はたいていこれではないかと思っている。

 人間性の成長を標榜する塾は、必ずこの点を見ている。やはり子供たちは馬鹿ではない。大人たちに求められて、「自己が確立している人間かのように振る舞う」子供たちが生まれないような教育をしているか、必ず確認する。

 

 本日の御社は二度と見ることはないだろう。